2021年2月19日金曜日

スウィング時代のDuke Ellington・その1

 スウィングに関して何も知らなかった時からスウィングと呼ばれるジャンルの音楽(主に1920年代〜40年代全般まで)を聴き始めて約17年、スウィングに関する知識や自分のダンス能力(スウィングは当時・最先端のダンスミュージックだった)が向上するにつれ、好きなタイプ(理解できる種類)のスウィングも随分変化してきた。

Louis Prima(ルイ・プリマ)がきっかけで聴き始めたスウィング。しばらくしてスウィングで踊るダンスがあることを知る。それがLindy Hop(リンディーホップ)なんだけど、このダンスはスウィングと強烈にリンクして生まれたダンスなので、踊れば踊るほど当時の音楽の事が理解できるようになってくるから不思議なもんだ。ことスウィングに関しては、当時どうしてこういう曲が流行ったのかは、踊らないと理解できない部分がある。(もちろん踊っていても理解できていない人も多いけれど、、)

前置きが長くなってしまったが、もし今、スウィングで一番好きなアーティストは誰かと聞かれたら、私は何の迷いもなくDuke Ellingtonと答えるだろう。

こう答えられるまでには少し時間がかかった、、。

なぜならディーク・エリントンやカウント・ベイシー、ビリー・ホリデーといったビッグネームは、スウィングを知らなくても少し音楽が好きな人なら名前くらいは知っているからだ。スウィングを知る前の私でさえ、『A列車で行こう』がDuke Ellingtonの曲だという事くらい知っていた。そのことが逆に最初はDuke Ellingtonを私から遠ざけていた。

実際、1920年代後半の彼のジャングルバンドの音源にたどり着くのには少し時間がかかった。それまで聴いてきた音楽のほとんどがステレオ録音で音もクリア、ベースの音がしっかり聞こえて自然に腰が動いてしまうわかりやすい音楽だったからね。

そんなもんだから急に古いスウィングのモノラル録音でしかも雑音だらけの音源をすんなり聴けるわけはない。だから最初はビートがはっきりして音のいいレコードを買っていたのだが、耳が少しずつ雑音にも慣れてくるにつれ1930年代の音源の格好良さが理解できるようになってきた。

その頃にはDuke Ellingtonの古いレコード(1920〜30年代)もそこそこ集めていたのだが、まだ彼の曲で踊るというイメージはわかなかった。なぜなら彼の作る曲の構成とアレンジが独特で初心者リンディーホッパーが踊るには少し敷居が高かったからだ。

スウィングに関する本もそれなりに読むようになって、Duke Ellingtonがそこそこ裕福な家庭に生まれた黒人で、当初は広告美術家(今でいうイラストレーター)を目指していたというのを知った。そして相当なお洒落好きで、自分のバンドメンバーの装いにも厳しかったと知り、好感を抱けるようになってきた。

時は経ち、自分もLndy Hopを人に教えるようになり、Duke Ellingtonの音楽への理解もかなり深まった。(あくまで主観)いつかは彼の曲でパフォーマンスをしたいと考えていたのだが、それが実現したのは2018年のMood for Swing(年に1度Swing Gigoloが開催している国内最大のリンディーホップ・イベント)だった。

曲は1927年録音の"BROWN BERRIES"。Fred GuyのバンジョーやSonny Greerのハイハットさばきが気持ちのいい,ちょっとファニーで独特なアレンジの曲。

曲のイメージに合わして私達が振り付けしたのがこちらの映像。

*youtubeリンクはこちら



Duke Ellingtonに関してはリリースされている曲数が半端なくて、レコードを集めても次から次へ知らない曲がでてくるので全貌はまだ追い切れてない。自分のやっているLindy Hopのイベントひとつ、"Chocolate Shake"も彼が1941年に発表した曲からとっている。これはワウワウ的なホーンリフが不思議なミステリアスな曲。

どうしてこの文章を書いたのかと言えば、つい最近、彼の最初期の音源が収録されているレコードを購入したからだ。このレコードはフランス盤で、Duke Elllingtonが20歳のときに吹き込んだピアノソロの曲(1924年録音)から彼の初期のバンドThe Washingtonians(1924年ー26年録音)などが雑音たっぷりで収録されている。




今ではこの雑音だらけの1924年録音の音楽でも、自分の耳のフィルターで雑音をカットしてその奥にある音楽のグルーブを聴けるようにまでになってしまった。



2021年1月8日金曜日

Putney Dandridge 1935~1936 / pianist & singer

PUTNEY DANDRIDGEは1930年代に活躍したピアニストでヴォーカリスト。

私はRARITIESというレーベルが編集したLPレコードを2枚持っている。(2021年1月現在)
両方とも(vo.1,vol.2。調べるとvol.3まであるようだ)1935年〜1936年の録音。
それ以前、何かのコンピレーションで彼が歌っている"When I Grow Too Old To Dream"という曲をみつけて、
それがとても気に入ったのでダンスの振り付けで使った事もある。


彼の歌い方はソウルフルなシャウト系で、これは30年代当時のシンガーとては結構珍しいのでは。
バックで演奏するミュージシャンも、ロイ・エルドリッジ、チュー・ベリー、バスター・ベイリー、テディー・ウィルソン、ジョン・カービー、レッド・アレンなど超一流どころを揃えていて、
ノリはファッツ・ウォーラーっぽくもあるのだが、それをよりルーズにブルースよりにした感じと言えるだろうか。
聴くところ彼のピアノはそんなに上手には聞こえないんだけど、
バックに錚々たるメンバーが揃っているところをみると、影の実力者なのかと勘ぐってしまう。
とは言っても演奏はカチッとアレンジが決まっている感じではなく、なんとなくこんな感じでね〜、
みたいな緩いスウィング感を醸し出している。

 


ここまでが、全く彼の情報をチェックせずにレコードを聴いてきた自分の感想。
ここからは少し調べてみた情報。

1902年にヴァージニア州リッチモンド生まれの彼は1918年にはピアニストとして活動をしていた。
1930年にはいって、タップダンサーのBill "Bojangles" Robinsonの伴奏者をしていたらしい。
なるほど、ここで彼の人脈が納得ですね!
その後オハイオでバンドを組んでいたものの、ソロとしてやるべく1935年あたりにニューヨークに出てくる。
そのときに行ったレコーディングが私の持っているレコードらしい。
その後病気で引退をせざるを得なくなって44歳の若さで死亡。
(アメリカのウィキより抜粋)

ドロシー・ダンドリッジと何か関係あるのかと思っていたのだが、
彼女は西海岸だし、活躍していた時期は近いけれど、
その記述はないのでダンドリッジ・シスターズとは関係ないようだ。

 

 

 

レコードの感想に戻るが、2枚ともいい感じの緩いスゥイングに仕上がっていて、
特にキラーチューンはないけれど、全曲リラックスして楽しめるいい作品揃い。
vol.3と出会えれば購入したい。


ちょっとBob Howardともかぶる感じで、2人とも当時のヒット曲をとりあえずレコーディングしている。
Bob HowardはFats Wallerから鋭さを抜いた感じのピアニスト&シンガーでこちらもお勧め。





2012年8月13日月曜日

The Cats & The Fiddle / I Miss You So

 The Cats & The Fiddle / I Miss You So
Jumpin' jiveファン、swingファン、 そしてリンディーホッパーなら知らない人はいないであろうバンドキャッツ&ザ・フィドルのレコードをやっと入手しました。
名前は知らなくても思わず踊り出したくなるような曲を聴けば必ずあ〜、あれねっ!
って納得するバンドです。
日本でもリュージ&ホット・クラブやバロンくん、その他多数のミュージシャンがカバーしています。
1976 RCA Records AXM2-5531

この2枚組のアナログは彼らの唯一のLPレコードで(多分)ネットでみかけても大体6000円〜10000円の値段がついていて、それでもsold outになっている場合が多いです。

内容は、1枚目のレコードが1939年に録音された曲で構成されていて、
A面の一曲目の "GANG BUSTERS"から "MR.THYTHM MAN" "WE CATS WILL SWING FOR YOU" などなどお馴染みの曲が満載。

ライナーによると、1939年、彼らはシカゴの有名ブルースギタリスト、タンパ・レッド(Tampa Red)の紹介でRCAのレースレコード(race records)担当のレスター・メルローズと知り合ってデビューしたらしい。
バンドリーダーはAustin Powellで彼が殆どの曲を歌って、かなりの曲を作っている。
他のメンバーは、ギターのJimmie Henderson、ベールはChuck Barksdale, ティップルという楽器(10弦ギター?)で主なギターソロを担当するErnie Priceの4人組。
しかし4人でここまでリズミックでポップでタイトなビートが醸し出せるのがホントに凄い。

2枚目は1940年〜41年の曲で構成されていて、この時期のメンバーは、
 ギターのJimmie Hendersonの急死の後をうけて、1940年にHebie Milesが加入し数曲録音。
1941年には、ギターはかのLloyd "Tiny" Grimesに交代。
Tiny Grimesの作った小粋なバラード "I'LL ALWAYS LOVE YOU JUST THE SAME"は
菊地成孔氏も"HOT HOUSE"でカバーされています。

詳細はこの裏ジャケットのデータをご参考ください。














そしてこちらはメンバーの写真。
下がオリジナルメンバー。













バンドは、アメリカが第二次世界大戦に参戦して、リーダーのAustin Powellが徴兵されてたことから自然に消滅することになる。

戦争から戻って、Austin Powellはブルックリンでジャズコンボを率いて1960年代まで
音楽活動を続けていたようだが、jazzの表舞台からは遠ざかっていったようだ。

以上は、レコードのライナーから拾って紹介してみました。

このタイプのバンドは1930年代中期には沢山いたそうなんですが、
音源として残っていて、ここまでのクウォリティーとポップ感のあるバンドは、
今のところ、先輩格にあたる Teddy Bannを擁する"Spirits of Rhythm" 。(後期にはLeo Watsonも参加)と"Slim & Slam" くらいしか思い当たらない。

以下はThe Cats & The Fiddleの曲で踊っているリンディーホップのパフォーマンス映像です。
こちらは "WHEN I GROW TOO OLD TO DREAM"で踊るDax & Aliceの素晴らしいパフォーマンスです。



こちらは私達がとりあげた(手前味噌ですみません) "MR.RHYTHM MAN"でのパフォーマンスです。



2010年7月26日月曜日

Fats Waller / THE GREAT FATS WALLER

スイングにはまって約7年と少し経った今、もしスイングをあまり知らない人からどういう音源を買えばいいか聞かれたとしたら、間違いなくこのファッツ・ウォーラーを勧めるでしょう。
 私にとって、ピアニストで作曲家で歌手である彼こそが、スイングそのものなのです。
とってもキャッチーなメロディーに、ちょっと愉快で陽気なテイストのヴォーカル、強力なリズムを作り出すピアノとエネルギッシュな演奏、これは踊る以外にないでしょう。そう、基本スイングはダンスミュージックなのです。

名前の通り太っちょな彼には面白い逸話が沢山あるようです。
外見からもわかるように、とにかく陽気に飲んで騒ぐのが好きだったらしく、気前もよくて
お金がなくなると安いお金で曲を売っていたという話も読んだ事があります。
クラシックにも造詣が深く、クラックの演奏も出来たそうなのですが、
誰もそういう演奏を望んでないという事で残念がっていたという話も読んだ事があります。
そんな彼は1943年、39歳で列車の中で亡くなりました。

さて、彼がレコーディングした曲は膨大な数があり、500曲以上と言われています。
レコードを買えども買えども知らない曲が出てくるし、そのほとんどの曲に外れがないのが凄い。

ここに紹介するのは、『RCAジャズ栄光の遺産シリーズー5/ジャズの巨人・ファッツ・ウォーラー』という日本盤の5枚組です。
油井正一・栗林政昭・大和 明・監修 のコンピレーションなのですが、選曲も内容も素晴らしいです。何より日本語の解説、それも曲の感想とかではなく、しっかりしたデータが載っているので大変勉強になるし面白いです。
現在、リンディーホップ(1920年代後半にハーレムで生まれたペアダンス、スイングダンスとも呼ぶ)のコンテストで使われている曲など、このレコードには沢山入っています。
Twenty-Four Robbers,Buckin' Dice,Cross Patch,It's a Sin to Tell a Lie,等々、、、。

record-1
side-1
1.AIN'T MISBEHAVIN'
2.DO ME A FAVOR
3.YOU'RE NOT THE ONLY OYSTER IT THE STEW
4.CLOTHES LINE BALLET
5.ALLIGATOR CRAWL
6.I'M A HUNDRED PER CENT. FOR YOU
7.BABY BROWN
8.NIGHT WING
side-2
1.ROSETTA
2.I'M GONNA SIT RIGHT DOWN AND WRITE MYSELF A LETTER
3.DINAH
4.YOU'RE THE PICTURE
5.YOU'RE SO DARN CHARMING
6.WOE !  IS ME
7.A LITTLE BIT INDEPENDENT
8.YOU STAYED AWAY TOO LONG

record-2
side-1
1.FUNCTIONIZIN'
2.WEST WING
3.THAT NEVER-TO-BE-FORGOTTEN NIGHT
4.CHRISTOPHER COLUMBUS
5.CROSS PATCH
6.IT'S A SIN TO TELL A LIE
7.BIG CHIEF DE SOTA
8.BLACK RASPBERRY JAM
side-2
1.LATCH ON
2.S'POOSIN'
3.COPPER COLORED GAL
4.SWINGIN' THEM JINGLE BELLS
5.A THYME FOR LOVE
6.THE LOVE BUG WILL BITE YOU
7.HONEYSUCKLE ROSE
8.DON'T YOU KNOW RO DON'T YOU CARE ?

record-3
side-1
1.BLUE,TURNING GREY OVER YOU
2.KEEPIN' OUT OF MISCHIEF NOW
3.STARDUST
4.I'M ALWAYS IN THE MOOD FOR YOU
5.MORE POWER TO YOU
6.A HOPELESS LOVE AFFAIR
7.JEALOUS OF ME
8.NEGLECTED
side-2
1.WHY HAWAIIANS SING ALOHA ?
2.THE SHEIK OF ARABY
3.ON THE BUMPY ROAD TO LOVE
4.WE,THE PEOPLE
5.TWO SLEEPY PEOPLE
6.YACHT CLUB SWING
7.LOVE,I'D GIVE MY LIFE FOR YOU
8.THE SPIDER AND THE FLY

record-4
side-1
1.GOOD FOR NOTHIN' BUT LOVE
2.STEP UP AND SHAKE MY HAND
3.UNDECIDED
4.WAIT AND SEE
5.WHAT A PRETTY MISS
6.SQUEEZE ME
7.BLESS YOU
8.SUITCASE SUSIE
side-2
1.THE DARKTOWN STRUTTERS' BALL
2.SWINGA-DILLA STREET
3.MIGHTY FINE
4.OLD GRAND-DAD
5.FAT AND GREESY
6.DRY BONES
7.FATS WALLER'S ORIGINAL E FLAT BLUES
8.EVERYBODY LOVES MY BABY

record-5
side-1
1.'TAIN'T NOBODY'S BIZ-NESS IF I DO
2.LIVER LIP JONES
3.BUCKIN' THE DICE
4.DO YOU HAVE TO GO ?
5.ALL THAT MEAT AND NO POTATOES
6.CAROLINA SHOUT
7.TWENTY-FOUR ROBBERS
8.HEADLINES IN THE NEWS
side-2
1.CHANT OF THE GROOVE
2.BUCK JUMPIN'
3.CLARINET MARMALADE
4.WINTER WEATHER
5.DON'T GIVE E THAT JIVE
6.THE JITTERBUG WALTZ
7.BY THE LIGHT OF THE SILVERY MOON
8.SWING OUT TO VICTORY

2010年7月25日日曜日

Louis Prima / Together

Louis Prima / Together (Dot records 1960)
私がスイングにはまるきっかけになったのがこのレコード。
このレコードと出会わなければ、ここまでスイングにはまることはなかったでしょう。

ルイ・プリマと言えば、その独自のだみ声とトランペット、当時の奥さんのキーリー・スミスとのおしどりデュオで5〜60年代ラスベガスで大人気のアーティストでした。
残念ながら日本での一般的な知名度は今ひとつ。
実際私もこのレコードをジャケ買いするまでは知りませんでした。
しかし知れば知るほど、彼はスイング界でも重要人物で、実際ベニー・グッドマンの名演で有名な『シング・シング・シング』(曲を聴けば誰でも知ってると思います)は彼の作曲でした。

ほかにも彼が歌った『ジャスト・ア・ジゴロ』も有名です。
1998年にGAPが彼の曲"JUMP,JIVE,AN'WAIL"を起用して、リンディーホップを絡めた面白いCMを作りました。そして、この1998年あたりからネオ・スイングブームが起こりました。



彼の話はまた別の機会にすることにして、このアルバムの話に戻りますと、

内容はスタンダードを中心とした軽妙なアレンジのリラックスしたアルバムです。
演奏も彼らがいつもやっている生演奏に近いかんじでシンプル,というかシンプルすぎ。
そこがまた親しみやすくて、聴けば聴くほど好きになっていきました。
ルイ・プリマのおふざけ感とキーリーのまじめさのギャップが面白いので、デュオもしくはルイだけの
曲はいいのですが、キーリーのソロだと少し物足りない感じは否めません。
実際のステージもサックスのサム・ブテラを絡めつつ、まじめな奥さんにはしゃぐルイって感じの
ステージだったようです。



side-1

1.Together
2.Paradise
3.Teach Me Tonight
4.The Pussy Cat Song
5.They Can't Take That Away From Me
6.I Can't Give You Anything But Love


side-2

1.When My Baby Smiles At Me
2.Let's Get Away From it
3.Mashuga
4.Let's Call Whole Thing Off
5.Mutual Admiration Society
6.Begin The Beguine


録音:1960年